投稿順 増田本論争1@Economics Lovers Live(旧)
2006-06-09


直接来られた方は「“増田本論争”のまとめ」もご覧いただければ幸いです。

上から投稿順に「Economics Lovers Live(旧)」の
書評再掲:『日本型ヒーローが世界を救う』|[URL]
のコメントを並べ替え下部に線を挿入したものです。

せっかくなので,人別に色分けしてみました。ダークサイドは暗く,ヒーローサイドは明るくしようとしてみましたが,上手くいってないようなので,そのうち修正するかも。

さらに引用やメモ用にidを付けてみました。idのURLはその発言の先頭へのリンクになっています。

このエントリーは投稿順 増田本論争2@Economics Lovers Live(旧) に続きます。


2006/04/14

 先週でました『週刊東洋経済』書評の再掲載でございます。競争的な市場が自由で多様な表現を可能にする、ということを増田さんは主張しています。競争市場を市場原理主義の横暴である、文化とは背反する、と主張される方はこの本でも読みましょう。

 『日本型ヒーローが世界を救う!』増田悦佐 宝島社

評者 田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部助教授)

 著者は『高度経済成長は復活できる』で、戦後日本の高度成長は競争原理が導入されたことの結果であるとし、それが七〇年代以降低迷しているのは効率を犠牲にした都市から地方への再分配政策にあると喝破した。さらに前著『国家破綻はありえない』では財政破綻の危機が数字のまやかしと政府・財務省やその便乗者たちの宣伝活動にすぎないとし、今日の財政再建路線を痛烈に批判した。最新作である本書でも増田節とでもいうべき力強い発言はあいかわらずである。

本書の基本的なアイディアは、日本のマンガをディズニーアニメやコミックを代表とする「アメリカ文化へのキャッチアップ」としてとらえる見解への批判にある。

著者は「アメリカ文化へのキャッチアップ仮説」の典型としてオタク文化の代表的論客といえる大塚英志氏の主張をとりあげて容赦のない批判を展開している。大塚氏を代表とする「アメリカ文化へのキャッチアップ仮説」とは、日本のマンガを手塚治虫とその模倣の歴史と断定し、これらがすべて意図するとしないとにかかわらずディズニーの鋳直しであるとする見解である。そして手塚の時代から今日までアメリカンコミックやアニメが暗黙の目標であり、この目標へのキャッチアップとして日本のマンガやアニメの隆盛をとらえられている

 これに対して著者は、日本のマンガ文化の隆盛はむしろ自由競争の産物であり、アメリカのコミックやディズニーアニメは性表現の抑圧や勧善懲悪を強いる規制の産物であり多様性に欠けていると批判する。さらにマンガ文化は「こども」を消費者として発達してきた日本的市場であり、年齢という「規制」がない文化形態であること、『セーラームーン』や『ドラゴンボール』のような作品にはずば抜けたヒーローを排除する集団主義的な観点があり、正義と悪という二元論的な見方が採用されていないこと、さらには女の子が主人公になるマンガを大量生産してきたことなどを興味深く分析している。

 著者の競争(効率性の追求)が文化の固有性や多様性と矛盾しない、という視点は評者には納得のいくものであった。また最近の手塚治虫再評価にも著者は厳しい視線を投じ、『鉄腕アトム』よりも横山光輝の『鉄人28号』の方が放映時に子供たちの人気が高かった、と指摘し、日本のマンガ文化をディズニーの模倣としての手塚治虫とその後継とする「通説」を否定している。マンガに一家言あれば本書に突っ込みどころは多いだろう。それでも競争こそ多様性を生み出す、というメッセージは経済学と同様にマンガ文化においても無視することはできない重みをもっている。


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